第1ラウンド
※第1ラウンドについては、基本的にこちらを参照してください。『Archaeo-GIS Workshop』第1ラウンド「試行錯誤?」
- 日時:2007年1月27日(土)12:30~開場 13:00ゴング
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場所:東京工業大学 大岡山キャンパス 西8号館E棟6階 コラボレーションルーム
(地図は大学提供版とGoogleMaps版)
座標をお好みの方は、35°36′17.38″N, 139°40′57.89″E(WGS84)です。
内容:
13:00 趣旨説明(山口)
司会:清野 口頭発表1人40分(発表25分、質疑15分)
13:10 発表1
阿児雄之「GISを基盤とする調査情報交換」
13:50 発表2
山口欧志「遺跡情報の収集と管理,そして分析」
14:30 10分休憩
14:40 発表3
近藤康久「GISを用いたマルチスケールな遺物分布分析の可能性:
武蔵野-多摩-鶴見地域の縄文時代網漁具を題材に」
15:20 発表4
清野陽一「GISを用いた古代官衙と官道の関係性についての一考察」
16:00 20分休憩
16:20 Workshop
・Workshop A(座長:近藤)
データ取得(地形・遺構・遺物)、調査情報整理
・Workshop B(座長:阿児)
移動コスト計算(ハイキング関数・傾斜角計算)
18:00 次回告知
18:30 懇親会(食事代2,000から2,500円+飲み物代を予定)
<参加申込について>
会場および懇親会の用意に際して、参加者の人数を把握したいと考えております。
参加希望の方は、「氏名」「所属」「懇親会出席の有無」「PC利用の有無」を記載して、ako[at]archaeo.cs.titech.ac.jpまでご連絡ください。
申込締め切りは、1月21日(月)午後1時21分です。
*当日の参加も大歓迎です。
*当日は、会場にて電源と無線LAN接続を準備する予定です。
<発表要旨>
・阿児雄之「GISを基盤とする調査情報交換」
本発表では、調査者間での遺跡情報交換において、位置情報を媒介としてGIS上で実現させてきた例を紹介し、調査過程で発生した問題や培われてきたKnowhowについて議論を展開したい。現在の遺跡調査は、考古学者だけではなく、多分野の調査者が連携して実施される事が多くなって来ている。その為、各調査の成果を調査者間で交換・統合・共有する必要性がある。発表者は、主に物理探査および測量を担当してきた。これら調査結果は、その後の発掘や科学分析にも引き継がれる為、適切な情報を有している必要がある。
実践例は、GPSを用いた位置情報取得と調査情報整備に関するものである。イタリアの調査では、基準点の設定方法を紹介。エジプトの調査では、地形測量と各調査の参照点位置取得を紹介。鹿児島県の調査では、物理探査成果と発掘調査成果の統合を紹介する。いづれの調査も、複数の調査者が調査情報を交換しつつ進行している調査である。
・山口欧志「遺跡情報の収集と管理,そして分析」
表題にGISを掲げることを止めてみようと思った。
これまでは,考古学におけるGIS利用の実践例に目を留めてもらうためだった。しかし,最近は関連する考古学の論文や研究が増えている。GISを大きく取り上げたシンポジウムも開催された。そしてこのArchaeo-GIS Workshopみたいな集いが現実のものとなった。
また,遺跡調査は多種多様な考古資料の時空間情報を収集・管理・解析・表示して,その結果を解釈し,仮説の検証を繰り返す。この螺旋状の営みには手続き的客観性を保証する情報技術基盤が必要不可欠だろう。そこで、現状で最適な基盤となるものを求めた結果,GIS。
そんなふうに思って冒頭の一行を書いた今日この頃。
発表では,GPS等を用いた地形測量,地形情報や遺物の3次元座標の管理・分析,そして既存の報告書資料を用いた分析例を提示する。これまで積み重ねてきた実践例からGISの可能性と限界を共有したい。
・近藤康久「GISを用いたマルチスケールな遺物分布分析の可能性:武蔵野-多摩-鶴見地域の縄文時代網漁具を題材に」
本発表では,武蔵野・下末吉両台地と多摩丘陵から出土した縄文時代の網漁具を題材に取り上げて,遺構・遺跡レベルから地域レベルまでのさまざまな縮尺において考古遺物の分布を評価した上で,その成果を統合することによって未知の考古学的パターンが明らかになる可能性について議論する。
対象地域において,網漁の証拠となる錘具の分布状況を,GISで分布図の縮尺を自在に変更しながら検討していくと,まず遺構レベルでは,住居址床面に数個まとめて保管されている事例が知られており,遺跡レベルでは,大集落の各住居址からまんべんなく見つかる事例や,低湿地遺跡の水成堆積層から多数発見される事例がある。また,地域レベルで見ると,錘具の分布は古海岸線や大河川近傍の限られた地区に集中する傾向が認められる。
これらの結果を総合的に考察すると,従来よりも高い精度で,縄文時代の人々がどこでどのように網漁をおこなっていたのか特定することができる。
・清野陽一「GISを用いた古代官衙と官道の関係性についての一考察」
日本列島における考古学的研究において、文字資料の少ない先土器から弥生時代の研究については人類の行動パターンなどの分析を行う為にGISを導入した研究が比較的多く見られるのに対し、古代においては都城などの限られた例を除いて現状ではGISを導入した研究というのはあまり多くはない。
そこで今回の発表では、これまであまり取り上げられてこなかった古代を対象とし、主として歴史地理学の分野で進められてきた古代交通路の路線推定位置と、近世以来の古地名等による現地比定を経て、現在は発掘によって実際の場所が確認されつつある地方官衙の位置関係を、地形的要因との関係でとらえるためにGISを用いて考えてみたい。
古代官道の推定路線の研究は、これまで空中写真などを用いた分析によって多大な成果が上げられ、現在ではかなり詳細なルート復原が行われている。一方、従来より古代官衙は交通路を重視した選地がなされているという意見が主流である。そこでGISを用いて、移動コストを分析することで、その関係がいかなるものであったのかを考察したいと思う。